「高い」と言われたこと、ありませんか?
オンライン・対面問わず、音楽レッスンを提供していると、体験レッスンのあとで「ちょっと高いかも」「他のところはもう少し安かった」といった反応を受けた経験がある方は多いのではないでしょうか。
特にオンラインレッスンが普及し、「安く・簡単に学べる」が謳い文句になっている今、レッスン価格だけを比較して選ぶ人も少なくありません。
しかし、音楽の上達は、価格だけでは測れない「目に見えない価値」が多く含まれています。音楽講師として身につけたい“伝える力”や“ビジネス視点”について掘り下げてみましょう。

音楽家と非音楽家では「常識」が違う
まず最初に理解しておきたいのは、音楽家と非音楽家とでは、音楽に対する捉え方がまったく違うという点です。
私たち音楽家は、たとえ月に数万円かかっても「演奏できる喜び」や「技術が上がる満足感」に価値を見出します。でも、生徒さん(特に初心者や趣味の方)は、「月にいくら払っているか」「1レッスン何円か」といった目に見える支出に重きを置きがちです。
これは仕方のないことですが、講師側がそこを理解していないと、体験レッスンや料金説明でミスマッチが起きやすくなります。
実は大切なのは「1レッスンの価格」ではない
では、生徒にとって本当に重要なのは何でしょうか。
それは、「1曲を演奏できるようになるまでにかかる、総合的な時間と費用」です。
例えば、A先生は1レッスン3,000円で教えているけれど、完成まで半年かかる。
一方、B先生は1レッスン5,000円だけれど、完成まで3か月。
この場合、かかる費用はほぼ同じかむしろB先生の方が安く済む可能性もあるわけです。しかも、早く達成できた方がモチベーションも保ちやすい。
にもかかわらず、生徒さんが最初に比較するのは「レッスン単価」です。ここで講師の伝え方が大きな分かれ目になります。
講師ができる“価値の伝え方”とは?
体験レッスンや料金説明の場面で、ただ「1回5,000円です」と伝えるだけでは、どうしても単価の印象に引っ張られてしまいます。
そこで大切なのは、以下のような“未来を見せるプレゼン”です
✅ 例1:「この曲が弾けるようになるまでを、一緒にゴールとして描く」
「この曲は大体〇か月くらいで形になりますよ。毎週レッスンだと〇回分で、だいたい〇円くらい。これで、1曲完成できます。」
✅ 例2:「あなたのペースに合わせた無駄のない進め方を大切にしています」
「ゆっくりでも、無理なく。だけど、上達のポイントはしっかり押さえます。無駄な回り道をしないので、最短でゴールを目指せます。」
✅ 例3:「相性が良ければ、上達スピードは加速します」
「先生と生徒の相性も大切です。技術だけでなく、モチベーションや継続力にも影響します。」
こういった未来像を伝えることで、単なる“金額”ではなく“価値”で判断してもらえる可能性が高まります。
それでも「高い」と言われたら?
もちろん、それでも「ちょっと高いかな」と感じる方はいるでしょう。
でも、それでいいのです。あなたの価値をきちんと理解してくれる生徒さんを迎えることのほうが、長い目で見れば圧倒的に成果につながります。
生徒の“学ぶ姿勢”も育てるのが講師の役割
音楽講師は、ただ教えるだけの存在ではありません。
ときには、生徒が「何を基準にレッスンを選ぶか」についても、考え直すきっかけを提供する存在であるべきです。
「安いレッスンを渡り歩いて、結局何も身に付かなかった…」という声は、残念ながらよく聞く話です。講師がしっかりと価値を伝え、正しい選び方を案内できれば、それも防げます。
安価なレッスンが“高くつく”こともある
- 先生が忙しすぎてフィードバックが雑
- マンツーマンではなく、グループでしか受けられない
- 講師経験が浅く、上達に時間がかかる
- 継続率が悪く、すぐにレッスンが終了してしまう
こうした「安いけど遠回り」なレッスンを選んでしまうと、結果的に時間もお金も無駄になってしまいます。
あなたのレッスン料は“成果報酬”です
講師として、自信を持ってほしいのは「あなたのレッスンは成果に対する報酬である」ということです。
演奏技術が上がる。憧れの曲が弾ける。音楽がもっと好きになる。
そういった変化のきっかけになる時間を提供しているのが、音楽レッスンです。
だからこそ、ボランティアではなく、適正価格を設定することが“生徒のため”にもなる。
この感覚を忘れずに、ぜひご自身の料金提示やプレゼン内容を見直してみてください。

あなた自身が自信を持つことが、最大の価値提供
価格に自信がないと、どんなに素晴らしいレッスンをしていても、魅力が伝わりません。
でも、あなたのレッスンが生徒さんの人生を豊かにする力を持っているとしたら、それは堂々と価値として伝えていいものです。
講師としての誇りと、ビジネス感覚。その両方を持ち合わせたとき、あなたの教室には“本気で学びたい”生徒が集まるようになります。